私的評価
海外連続ドラマ『McMafia - マクマフィア』を観ました。Amazonプライムビデオでの視聴です。
このドラマを観ようと思ったきっかけは、製作にイギリスBBCが関わっていたことです。NHK制作のドラマに外れが少ないのと同様、BBC制作のドラマも高品質でハズレが少ないという印象があり、とりあえず視聴してみることにしました。
実際に観てみると、この『McMafia - マクマフィア』もその期待を裏切らず、しっかりと作り込まれたドラマでした。登場人物の心理描写や国際的な犯罪組織の描写など、リアルで緊張感のあるシーンが随所にあり、視聴者を物語に引き込む力があります。特に、主人公アレックス・ゴッドマンが家族や自身の立場と葛藤しながら、マフィアの世界で生き抜こうとする様子は見応えがあります。
ただ、全体を通しての印象としては、盛り上がり感やドラマティックな波がやや控えめで、派手なアクションや急展開に欠ける印象も受けました。そのため、アクション重視の海外ドラマに慣れている視聴者にとっては、少し地味に感じるかもしれません。しかし、この落ち着いた演出こそが、登場人物の心理描写や国際マフィアの複雑な構造を丁寧に描き出す手法であり、深く物語に入り込みたい視聴者には好ましい演出とも言えます。
総合的には、テンポは派手ではないものの、緻密な脚本とリアルな国際犯罪描写、人物の内面描写が魅力のドラマで、じっくり楽しめる作品でした。
★★★☆☆
作品概要
監督はジェームズ・ワトキンス。原案はホセイン・アミニ、ジェームズ・ワトキンス。
脚本はホセイン・アミニ他。
主演はジェームズ・ノートン、その他の出演者にはデヴィッド・ストラザーン、メラーブ・ニニッゼほか。
2017年、イギリスで製作された全8話のテレビドラマシリーズです。
題名の「マクマフィア」とは、グローバルに勢力を拡大して数で相手(敵)を圧倒するハンバーガーのマクドナルドとマフィアを掛け合わせた造語とのこと(マクドナルド×マフィア=マクマフィア)。
作品の紹介・あらすじ
あらすじ
ロシア・マフィアのヴァディム・カリャーギンが襲撃され、ボリス・ゴッドマンの仕業と知る。イギリス育ちのアレックス・ゴッドマンは家族のマフィアとのつながりを嫌い、自力で設立した投資ファンドを合法的に経営しようとする。だがファンドの経営危機の噂が流れて苦境に落ち、叔父のボリスは怪しげなロシア系イスラエル人の実業家クレイマンを紹介する。アレックスの目の前でボリスはロシア・マフィアに惨殺され、アレックスはヴァディムに会って弁解する。だが弟を殺されたアレックスの父は自殺未遂を図る。
クレイマンはヴァディムの組織を規模で上回るマフィア版のマクドナルドを作りたいと話し、家族の安全を求めるアレックスは、投資と引き換えにマネー・ロンダリングを引き受ける。クレイマンは移動させた資金を使いチェコやインドでヴァディムの事業を妨害しようとし、アレックスも巻き込まれてゆく。アレックスは婚約者や部下からクレイマンとの取引を隠し、インドでクレイマンの仲間が大量の麻薬をヴァディムから強奪する計画に関わる。
ヴァディムはクレイマンとアレックスの妨害に気づく。クレイマンは罪を着せられて逮捕され、アレックスはイスラエルに飛んで嫌疑を晴らし、引き換えにメキシコのカルテルと組むようクレイマンを説得する。アレックスはクレイマンの警備のジョセフを引き抜き、家族一人一人にボディーガードを付ける。だが安全のため距離を置いたガールフレンドのレベッカがヴァディムの手下に狙撃される。
周囲の圧力により、アレックス、クレイマン、ヴァディムはイスタンブールで和解する。だがアレックスはヴァディムを信用できず、ヴァディムに敵対するロシア人実業家とメキシコのカルテルの連携を画策する。父の知人がヴァディムを殺そうとして娘を殺してしまい、アレックスはモスクワで拘束され命を狙われる。脱出したアレックスがロシア人実業家とビジネスをまとめると、彼らは禍根を断つためヴァディムを襲撃し、アレックスが自らとどめを刺す。アレックスがロシア側の利益を代表して交渉する中、レベッカは彼の元を去る。
Wkipedia(マクマフィア)
感想・その他
元ロシアマフィアの息子で、イギリスで育った堅気の実業家だった主人公が、巻き込まれる形で裏社会と関わることになり、やがて自らの意志で犯罪の世界に足を踏み入れていくという物語が展開されます。一般的なマフィアドラマのように暴力や恐怖で勢力を広げるのではなく、主人公アレックスはバンカーとしての頭脳を駆使し、ライバル組織に対抗していきます。戦略や駆け引きが中心で、心理戦や情報操作がドラマの肝となっている点が、この作品の特徴です。アレックス役を演じるジェームズ・ノートンは、背が高く整った顔立ちのイケメンですが、物語序盤ではどこか頼りなげで、まるでいつも泣きそうな表情をしているように見えます。その頼りなさは、視聴者に主人公がまだ犯罪の世界に馴染めていない未熟さを印象付ける絶妙な演技です。しかし、ドラマ終盤ではそのイメージが一変します。元恋人からの電話にも動じず、颯爽と歩く毅然とした姿に、アレックスがこの危険な世界で生き抜く覚悟を固めたことが明確に表現されています。はじめの頃の気弱で頼りない表情も、全てジェームズ・ノートンの計算された演技だったのでしょう。
一方で、このドラマの欠点として、テンポの遅さが挙げられます。序盤の数話は特に展開がゆっくりで、やや退屈に感じる部分もあります。とはいえ、後半に入ってもハラハラ・ドキドキのスリリングな展開が一気に加速するわけではなく、全体的に落ち着いたスピードで物語が進みます。そのため、視聴中はじっくりとキャラクターの心理や組織間の駆け引きを味わう必要があります。シーズン2では、もう少し展開にメリハリをつけてくれると、より見応えが増すのではないかと期待しています。
総合的に見れば、『McMafia - マクマフィア』はスピード感よりも心理描写や戦略的駆け引きを楽しむタイプのマフィアドラマで、アレックスの成長や変化を丁寧に追える作品と言えるでしょう。
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