私的評価
イザベラ・バード著『日本奥地紀行』を図書館で借りて読みました。明治になってまだ11年の1878年、今から142年前の東京から北海道を旅した紀行文です。旅をしたのは当時47歳のイザベラ・バードというイギリス人女性です。
この本を読んでちょっとショックを受けました。それは、私が今まで持っていた当時の日本のイメージが、まったく違っていたからです。当時の日本人のことや農村部の暮らしぶりが、それはそれはちょっと怒れるくらい辛辣な表現で書かれていました。産業革命により一足先に近代化されたイギリス人からみれば、当時の日本は未開の地だったのでしょうね。
それはそれとして、明治初期の日本、それも東北の農村部や北海道のアイヌの暮らしなど、非常に興味がそそられる内容でした。
★★★★☆
『日本奥地紀行』とは
出版社内容情報
バードの原著簡略本40年ぶりの待望久しい新訳、いよいよ登場。明治日本を旅した英国人女性のこまやかで鋭い観察力とその描写が、今では失われた日本の習俗、気風、風景を伝える、旅と冒険の本!
内容説明
バードの原著簡略本の40年ぶりの待望久しい新訳、いよいよ登場。明治日本を旅した英国人女性のこまやかで鋭い観察力と描写が、当時の日本の習俗、気風、風景を伝える、旅と冒険の本!
目次
第一印象
旧きもの、新しきもの
江戸
中国人と従者
参拝
旅の始まり
粕壁から日光へ
金谷邸
日光
温泉場〔ほか〕
著者等紹介
金坂清則[カナサカキヨノリ]
1947年富山県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学名誉教授。イザベラ・バードに関する研究と写真展等の活動により、王立スコットランド地理学協会名誉会員他。専攻は人文地理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
紀伊國屋書店
感想・その他
この旅が行われた明治11年の夏は、関東から東北地方にかけてなかなか梅雨が明けず、青森に到着した8月初旬まで雨が降り続いたようです。「この年は異常気象だったのだ」という記述から、当時の天候の厳しさがうかがえます。考えてみれば、いつの時代にも異常気象は存在するのだと、妙に納得してしまいました。しかし、当時の旅人にとっては、衣類も荷物もずぶ濡れのまま、質素で貧相な宿に泊まらざるを得ない状況――考えるだけでも気が滅入ります。もし初夏の東北が晴天続きであったなら、イザベラ・バードの旅の印象もまったく異なるものになっていたでしょう。本書で描かれる日本の奥地旅行は、決して快適な旅ではありません。当時の農村では、不潔さや悪臭、蚤や蚊に悩まされることが日常茶飯事だったようで、その様子がこれでもかというほど詳細に書かれています。そのため、皮膚病を患う人も少なくなかったそうです。こうした描写を通じて、現代の便利で清潔な生活とのあまりの違いに驚かされると同時に、当時の農村部での暮らしの過酷さや、自然と向き合う生活の厳しさを改めて実感させられました。
イザベラ・バードの旅は、ただの観光旅行ではなく、異文化への挑戦であり、極限の環境下での体験の連続だったことが伝わってきます。雨に打たれ、虫や病気に悩まされながらも、彼女はひたすら奥地を進み続けた。その精神力の強さと観察力には、現代の私たちも感嘆せざるを得ません。

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