私的評価
映画『ホテル・ムンバイ』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
この作品の最大の魅力は、観客がまるで実際にホテルの客として人質になったかのような緊迫感を味わえる点です。スクリーンに映し出されるのは、銃声や叫び声、逃げ惑う人々、そして刻一刻と迫る危険。手に汗握り、息を呑むようなスリリングな展開が最後まで途切れることなく続きます。
実際のテロ事件を題材にした実話映画であるため、描写の一つひとつに現実感と恐怖が伴います。それでいて、単なるドキュメンタリーや再現ドラマにとどまらず、娯楽映画、アクション映画としての見応えもしっかり確保されており、緊張感と興奮のバランスが絶妙です。
観終わった後も、事件のリアルさと人間ドラマの力強さが印象に残り、「観てよかった」と思える一本です。臨場感あふれるサスペンスや実話ベースのアクション映画が好きな方には、間違いなくおすすめできる映画です。
★★★★☆
作品概要
監督はアンソニー・マラス。脚本はジョン・コリー、アンソニー・マラス。
制作はベイジル・イヴァニクほか。
出演はデーヴ・パテール、アーミー・ハマーほか。
2018年制作のオーストラリア・インド・アメリカ合衆国の映画です。
作品の紹介・あらすじ
解説
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』などのデヴ・パテルを主演に迎え、2008年にインドのムンバイで起きたテロ事件を題材にしたドラマ。高級ホテルに監禁された宿泊客を救おうと奔走した従業員たちの姿を映し出す。本作で長編デビューしたアンソニー・マラスが監督を務め、『君の名前で僕を呼んで』などのアーミー・ハマーがアメリカ人旅行者を演じた。
あらすじ
身重の妻と小さい娘がいるアルジュン(デヴ・パテル)は、インド・ムンバイの五つ星ホテル、タージマハルで、厳しいオベロイ料理長(アヌパム・カー)のもと給仕として働いていた。2008年11月26日、ホテルには生後間もない娘とシッターを同伴したアメリカ人建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)や、ロシア人実業家のワシリー(ジェイソン・アイザックス)らが宿泊していた。
シネマトゥデイ
感想・その他
2008年11月、インドのムンバイで発生し、少なくとも170人以上が死亡したテロ事件を描いた実話映画です。外国人向けの高級ホテルや鉄道駅などが、イスラム過激派と見られる勢力に襲撃され、多数の犠牲者を出しました。その襲撃対象の一つであるタージマハル・ホテルでは、500人以上の宿泊客が人質となります。本作は、そんな極限状態の中で、命を懸けて宿泊客を救おうと奮闘するホテルマンたちの姿と行動を描いています。しかし、この「ムンバイ同時多発テロ事件」は、これだけの惨劇だったにもかかわらず、私にはほとんど記憶に残っていませんでした。事件発生当時、ニュースを見ていたはずですが、他の大規模テロ事件――アメリカ同時多発テロ(9.11)やロシア・ベスラン学校占拠事件――と比べると、なぜか記憶に定着しなかったのです。その点は自分でも不思議に思います。
映画に登場するテロ集団は、いずれも若い青年たちです。ホテルの従業員や客を見つけると問答無用で射殺し、暴力の限りを尽くします。その姿からは、人間の心を持たないかのような恐怖が伝わってきます。しかし、彼らを操る黒幕が存在し、信仰心や金銭で動かしていたという事実も描かれます。この黒幕は、事件後も裁かれることなく、現在も普通に暮らしているといいます。考えようによっては、テロ集団の若者たちも、利用され犠牲となった存在だったのかもしれません。
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