羽根田治著『ドキュメント 滑落遭難』を読んだ感想

私的評価

羽根田治さんの「遭難シリーズ」は何冊か読んでいて、今回Kindle版があったので「Kindleオーナー ライブラリー」を使って読んでみました。
因みに「Kindleオーナー ライブラリー」とは…

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「遭難」を扱った、この手の本を面白いというのは語弊があるのかもしれませんが、かなり興味深く読むことができます。元々、生還ものや漂流ものといった本を読むのが好きなんです。
実際にあった7件の滑落遭難事例を取り上げ、どうして遭難してしまったのかを探っています。
かなり参考になりますが、いざとなったら自分はどうなんでしょうか。

★★★★☆

『ドキュメント 滑落遭難』とは

この著者の本は『ドキュメント 道迷い遭難』、『ドキュメント 気象遭難』と読んでおり、今回が三冊目です。

内容説明
山ではちょっとした不注意から、つまづいたり転んだりして大ケガや死に直結する大事故に結びつくことが多い。その危険因子はどこにあるのか。七件の遭難事例を取り上げ、原因を探り、防ぐ方策を検証する。実例から学ぶことで、遭難防止、安全登山を呼びかけ、大きな反響を呼んだシリーズの文庫版。

目次
・富士山―二〇〇〇年四月
・北アルプス・北穂高岳―二〇〇一年九月
・大峰山脈・釈迦ヶ岳―二〇〇六年五月
・赤城山・黒桧山―二〇〇七年一月
・北アルプス・西穂独標―二〇〇七年三月
・南アルプス・北岳―二〇〇七年六月
・近年の事例―埼玉県警山岳救助隊からの報告

著者等紹介
羽根田治[ハネダオサム]
1961年、埼玉県生まれ。フリーライター。山岳遭難や登山技術の取材経験を重ね、山岳専門誌『山と溪谷』や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

紀伊國屋書店

感想・その他

私は、今現在も多少の山登りしていますが、この著者の「遭難シリーズ」は、山岳遭難について勉強できるという以上の内容の深さがあり、どの事例も興味深く一気読み私は現在も多少の山登りを楽しんでいますが、この著者の「遭難シリーズ」は、単に山岳遭難の知識を学べるという以上に内容が深く、どの事例も非常に興味深く、一気に読み進めてしまいました。本書に登場する遭難事例は、すべて著者が実際に遭難した当事者に取材し、その証言をもとに詳細に再現されています。しかし、単なる事実の列挙ではなく、それぞれのケースがまるで物語のように描かれており、読み物としての面白さも格別です。

本書で特に印象的だったのは、「滑落遭難」の多くが道迷いに起因しているという点です。道に迷うことで平常心を失い、時間的焦りや疲労が重なると、普段なら滑落しないような場所でも滑落してしまうと著者は指摘しています。読んでいると「どうしてそんな行動を?」と思う場面も多いのですが、実際に同じ状況に置かれれば、自分自身も予測不能な行動を取ってしまうのかもしれません。

私がよく登る三重県の多度山は、何度もさまざまなルートで登っており、基本的には一人でお気軽に登る山です。これまで遭難など考えたことはありません。しかし、この本を読むことで、どんなにお気楽な山でも、ある程度の装備は必ず用意して登るべきだと強く感じました。たとえ低山であっても、天候の急変や予期せぬ事故は起こり得るのです。

まずは、どんな山行でも朝早く行動を開始し、お昼までには下山を始める――そんな基本的なことから改めて意識して、安全な登山を心掛けたいと思います。本書は、遭難の恐ろしさだけでなく、山と向き合う際の心構えや慎重さを教えてくれる、山登りをする人にとって必読の一冊です。

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