キアヌ・リーブス主演、映画『レプリカズ』のあらすじ・感想など

私的評価

映画『レプリカズ』を観ました。
レンタルDVDでの鑑賞です。

主演はキアヌ・リーブス。製作陣にも名を連ねているとのことですが、正直「この映画にキアヌをキャスティングしたのはどうだったのか?」という疑問が拭えませんでした。近年の彼といえば、やはり『ジョン・ウィック』シリーズで見せた、静かな狂気と圧倒的な身体能力を兼ね備えた孤高の暗殺者のイメージが強烈に残っています。そのため、本作で白衣をまとい、研究室で倫理や命の在り方について葛藤する“科学者”としての彼を見ると、どうしても違和感を覚えてしまいます。演技そのものに破綻はないのですが、役柄とのミスマッチ感が際立ってしまったように思います。

物語は「愛する家族を事故で失った科学者が、倫理を超えてでも彼らを蘇らせようとする」というテーマで進行します。人間のクローンや意識の移植といったSF的な題材は確かに興味深く、序盤は「どう展開するのだろう」と期待を持たせます。しかし、中盤以降は説明不足な部分やご都合主義的な展開が目立ち、せっかくのテーマが活かしきれていない印象を受けました。科学的考証も深掘りされないまま、感情的な部分だけで押し切られてしまった感があります。

結末は「ハッピーエンド」と言える形で幕を閉じ、観終わったあとに重苦しさが残らないのは救いではあります。ただ、テーマの重さや倫理的ジレンマを十分に掘り下げないまま、きれいにまとめてしまったために「いまひとつ感」が強く漂ってしまいました。もっと突き詰めれば、愛と科学、倫理と欲望のせめぎ合いを描いた名作になり得たはずだけに、惜しい作品だったと思います。

それでも、SFスリラーとして軽く楽しむ分には悪くなく、キアヌ・リーブスがアクション以外の役どころに挑んでいる姿を見られるという点では、ファンにとって一見の価値はあるかもしれません。

★★★☆☆

作品概要

映画『レプリカズ』を観ました。
レンタルDVDでの鑑賞です。
監督はジェフリー・ナックマノフ。
脚本はチャド・セント・ジョン。
原案はスティーブン・ハメル。
製作はロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラほか。
出演はキアヌ・リーブスです。

2018年のアメリカ合衆国のスリラー映画です。

作品の紹介・あらすじ

解説
『ジョン・ウィック』シリーズなどのキアヌ・リーヴスが製作と主演を務めたSFアクション。事故で家族を失った学者が暴走する。監督は『デイ・アフター・トゥモロー』などの脚本を手掛けたジェフリー・ナックマノフ、脚本は『エンド・オブ・キングダム』などのチャド・セント・ジョンが担当。『推理作家ポー 最期の5日間』などのアリス・イヴ、『ジャック、舟に乗る』などのジョン・オーティスらが共演した。

あらすじ
人間の意識をコンピューターに移行させる実験を続け、成功目前まで近づいた神経科学者のウィリアム・フォスター(キアヌ・リーヴス)は、事故で家族を失ってしまう。深い悲しみの中、彼は家族のクローンを作り出し、そのなかに彼らの意識と改ざんした記憶を移し替える。そして今までと変わりない生活を送ろうとするが、実験の動向をチェックしていた政府の組織がサンプルとして家族を奪おうと画策していた。

シネマトゥデイ

感想・その他

キアヌ・リーブス以外に、これといった大物俳優が出演していないのは、やや寂しさを感じました。主人公ウィリアムの妻役を演じたのはアリス・イヴ。確かに端正な顔立ちをした美人女優なのですが、個人的にはあまり好みに合わず、正直のめり込むきっかけにはなりませんでした。そのため彼女の経歴を調べるのも少し億劫に…。ただし代表作のひとつに『スター・トレック イントゥ・ダークネス』があり、その中で下着姿になる場面が「不要ではないか」と物議を醸したそうです。役者としては美貌だけでなく存在感もあり、今後のキャリアを注目してみてもよいかもしれません。

さて、本作で描かれる最大のテーマは「クローン人間に記憶を移植する」というもの。設定自体はSF映画では定番ですが、よく考えると矛盾や疑問が次々に浮かんできます。クローンと呼ぶ以上は“遺伝子的に同一の人間”を指すはずですが、そこにオリジナルの記憶を上書きしてしまえば、それはもはや「クローン人間」というより「コピーされた本人」そのものではないでしょうか。

しかも細部に目を向ければ、さらに不自然な点が出てきます。たとえば人生の中でできた体の傷跡はどうなるのか。「あれ、あの時の傷がなくなってる」と気付かれてしまうはずです。あるいは長年体型に悩んでいた人が、突然スリムな体になっていたら「私ってこんなに痩せてた?」と違和感を覚えるでしょう。極端な話、「記憶はあるのに身体は処女に戻っている」なんてことだって起きるはず。そもそも、移植先のクローンをオリジナルと同じ年齢に成長させて造ること自体、どうやって実現するのか――考えれば考えるほどツッコミどころは尽きません。

もちろん、こうした細かい矛盾を気にせず「理論上は可能なんだ」と受け止めれば楽しめるのかもしれませんが、私のようにあれこれ考えてしまうと、つい首をひねってしまう場面も多いのです。もし「そんなのSF的には全然あり得る話だよ」と一笑に付されるなら、それはそれで納得します。ただし観客としては、設定にもうひと押しの説得力が欲しかった――そう感じました。

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