私的評価
映画『タイガーランド』を観ました。Amazonプライムビデオでの鑑賞です。
私はベトナム戦争ものだと思って、この映画を手に取りました。しかし、実際に観てみると、ベトナムでの戦闘シーンは一切なく、描かれているのはアメリカ国内で行われる新兵訓練の厳しい日々だけでした。その中で、新兵たちが経験する理不尽な上下関係や肉体的・精神的なプレッシャー、仲間との微妙な人間関係が非常にリアルに描かれていて、ただの戦争映画とは一線を画しています。
映画は基地での初期訓練から、最終的な過酷な訓練地「タイガーランド」までを追いかけます。ちなみに、タイガーランドとは「アメリカのベトナム」と呼ばれる場所で、ベトナム戦争を想定してジャングルを忠実に再現した訓練地です。ここでの訓練は過酷を極め、新兵たちの恐怖心や勇気、仲間との絆が試される場面が続きます。
戦闘シーンがないにも関わらず、観ているこちらまで緊張感が伝わり、手に汗握る展開が続くのが印象的でした。単なる戦争映画ではなく、若者たちの成長や葛藤を描いた、人間ドラマとしての側面も強く感じられる作品でした。
★★★☆☆
作品概要
監督はジョエル・シュマッカー。脚本はロス・クラヴァン。
製作はボー・フリン他。
出演はコリン・ファレル、マシュー・デイヴィスです。
2000年制作のアメリカ映画です。1971年、ルイジアナ州ポーク基地。ここは長引き泥沼化したベトナム戦争中の新兵たちの訓練の地。最後には通称“タイガーランド”と呼ばれる地で、一週間にもおよぶ実戦さながらの訓練が待っています。新兵ボズは、上官に向かって反戦を公然と口にし、苦しんでいる仲間たちを除隊へと導いたりもしていました。一方で、ボズ自身の兵隊としての能力は一流だった。やがてボズは新小隊長に任命されるが、隊員のひとりはそんなボズの考え方に反感を抱いていた…。
作品の紹介・あらすじ
解説
タイガー・ランドとはベトナムの戦地に赴く前にジャングルでの戦闘をシュミレーションするために、軍がつくりあげた最後の‘試練の地’と言われていた。脚本はロス・クラヴァン自身がタイガー・ランドにて実際に体験した経験に基づいて書かれているだけにリアルだ。監督は『バットマン』シリーズや『評決のとき』などのジョエル・シューマカー。手持ち16mmのムダのない映像は臨場感にあふれている。また、ボズ役で本作を演じるまで無名であったコリン・ファレルは全米批評家に大絶賛をあびハリウッドの新星と言われる。いままでのベトナム戦争を描いた映画と違い、戦地へ赴くことへの不安、恐怖、を正面から問いかける人間ドラマ。
あらすじ
ベトナム戦争の最中、最終歩兵訓練を行う第3部隊A中隊は8週間の訓練を受けた後、戦地ベトナムでのシュミレーションをするため“タイガーランド”と呼ばれる地で1週間を過ごしベトナムへ送られる。そんなA中隊に上官にたてついては懲罰房通いを続けているボズ(コリン・ファレル)が加わった。
シネマトゥデイ
感想・その他
コリン・ファレル演じる主人公ボズは、何かと問題を起こす訓練兵として描かれています。規則に従わず、時には上官に反抗するボズですが、その一方で仲間思いの一面も持っています。例えば、病身の妻と4人の子どもを抱える新兵には除隊の道を開き、精神的に追い詰められた小隊長を病院に行かせるなど、冷静かつ思いやりのある判断を下す場面も見られます。ボズのこうした行動は、単なる問題児以上の人物像を印象付けています。それでも、戦争に対する疑問を抱くボズ自身は、逃げ出したいという葛藤に常に悩まされています。それでも結局逃げ出さず、仲間や任務と向き合う姿勢を貫きます。そのため、ボズを快く思わない訓練兵も現れます。特にタイガーランドでの訓練では、ボズと彼らとの間に生じた確執がクライマックスの騒動へと発展し、緊張感ある展開を生み出します。
そして、タイガーランドでの厳しい訓練を終えたボズたちはついにベトナムへ出征します。その際、ボズが見せる行動こそ、私にとってこの映画の最も印象的なシーンでした。それは、これまで反抗を繰り返してきた教官に対して、敬意を示して敬礼する場面です。これまでの反抗や葛藤の積み重ねを経て、最後に示す尊敬の念は、ボズの成長と人間性を象徴する瞬間であり、観ていて胸が熱くなるシーンでした。
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