私的評価
映画『エル ELLE』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
レンタルショップでパッケージを見かけ、「スリラー映画」と書かれていたので、怖くてハラハラする展開を期待してなんとなく借りてみました。ところが、実際に観てみると、私のイメージとはまったく違った内容で、いわゆる典型的なスリラー映画とは言えないのでは、と思わずにはいられませんでした。
この映画の魅力は、単純な恐怖や緊張感ではなく、人間の心理や欲望の奥底に迫る点にあります。主人公を取り巻く人間関係や、彼女自身の複雑な心理描写が丁寧に描かれており、むしろエロティックサスペンスとしての要素が前面に出ています。予想外の展開や、登場人物たちの思惑が絡み合う中で、観る者は心理的な緊張感や興味を刺激され続けます。
「怖い映画」という先入観を捨て、登場人物たちの心理戦や大人の人間ドラマとして楽しむと、この映画の面白さや独特の魅力がよくわかります。単なるスリラーとは一線を画し、観る者の感情や価値観を揺さぶる、独特の世界観を持った作品だと感じました。
★★★☆☆
作品概要
監督はポール・バーホーベン。脚本はデヴィッド・バーク。
製作はミヒェル・メルクト、サイド・ベン・サイド。
原作はフィリップ・ジャンの「Oh…」。
主演はイザベル・ユペール、その他出演者にロラン・ラフィット、アンヌ・コンシニほか。
2016年公開(日本では2017年)のフランス映画です。監督は『氷の微笑』のポール・バーホーベンで、主演は『ピアニスト』のイザベル・ユペールです。原作はフィリップ・ディジャンの小説「Oh…」です。ゲーム会社のCEOであるミシェルは、ある日突然、自宅に侵入してきた覆面男に襲われます。警察にも届けず、何事もなかったかのように今まで通りの生活を送ろうとしますが…。
作品の紹介・あらすじ
解説
『ピアニスト』などのフランスの名女優イザベル・ユペールと『氷の微笑』などのポール・ヴァーホーヴェン監督が組んだ官能的なサイコスリラー。『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ディジャンの小説を原作に、レイプ被害者の女性が犯人を捜しだそうとする姿を描く。『ミモザの島に消えた母』などのロラン・ラフィットや『愛されるために、ここにいる』などのアンヌ・コンシニらが共演。欲望や衝動によって周囲を巻き込んでいく主人公を熱演するイザベルに注目。
あらすじ
ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)はある日、自宅で覆面の男性に暴行されてしまう。ところがミシェルは警察に通報もせず、訪ねてきた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)に平然と応対する。翌日、いつも通りに出社したミシェルは、共同経営者で親友のアンナ(アンヌ・コンシニ)と新しいゲームのプレビューに出席する。
シネマトゥデイ
感想・その他
映画としては非常に面白く、最後まで引き込まれました。主演を務めるのは、フランスの至宝とも称されるイザベル・ユペールです。映画撮影時点で64歳という年齢ながら、その美しさは衰えることを知らず、まるで年齢を感じさせないほどの圧倒的な存在感と魅力を放っていました。年齢を重ねてもなお、演技力と美しさを兼ね備えた女優の貫禄をまざまざと見せつけられます。そして、映画のラストシーン。計画的だったのか偶然だったのか、観ている側に解釈の余地を残す演出です。個人的には、主人公の行動や状況を考えると「計画的犯行」と感じたのですが、果たして本当にそうだったのか、観る人によって意見が分かれそうです。このあたりの曖昧さが、映画の余韻や考察の面白さにもつながっています。
それにしても、フランス人ってこういう大胆で型破りな人たちばかりなのだろうかと、つい疑ってしまいます。ドラマ『刑事ジョー パリ犯罪捜査班』を観ていても、変わった人物や風変わりなキャラクターが多く登場しますし、フランス作品には独特のユーモアやエロティックな要素が散りばめられていることが多いと感じます。そんな意味でも、この映画はフランスらしさを存分に味わえる作品でした。
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