私的評価
映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』を観ました。レンタルDVDでの鑑賞です。
全体を通して非常に面白い映画でした。主人公レイ・クロックの行動や野心、そしてマクドナルド兄弟との関係の描き方には引き込まれ、企業経営や成功への執念がどのように人間関係や倫理に影響するかが、リアルかつ緊張感を持って描かれています。観ているうちに、ビジネスの世界での競争の激しさや、成功の裏にある犠牲を強く感じさせられました。
しかし、個人的には最後に主人公に何らかの天罰や制裁が下ることを期待していました。正義や因果応報のカタルシスを求めていたのです。しかし、映画のラストではそうした報いは描かれず、主人公は結果的に成功を手にしてしまいます。そのため、観終わった後には、スッキリ感よりも後味の悪さが強く残りました。野心や自己中心的な行動の果てに勝者となる主人公を見届けることの違和感は、映画のテーマの深さや現実味を際立たせる一方で、やや複雑な気持ちも抱かせます。
ビジネス映画としての面白さは間違いなく、企業経営や野心の描き方に興味がある人にはおすすめですが、「正義が勝つ」「悪者が報いを受ける」といった爽快感を求めると、少し肩透かしを食らうかもしれません。
★★★★☆
作品概要
監督はジョン・リー・ハンコック。脚本はロバート・シーゲル。
製作はドン・ハンドフィールド。
主演はマイケル・キートン、その他出演者はリンダ・カーデリーニ、ローラ・ダーン、パトリック・ウィルソンほか。
2017年公開のアメリカの伝記映画です。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のマイケル・キートンが、マクドナルドの創業者レイ・クロックを演じた実話をもとにしたドラマです。
作品の紹介・あらすじ
世界最大級のファーストフードチェーンを作り上げたレイ・クロック。日本国内でも多くの起業家たちに、今なお絶大な影響を与え続けている。50代でマック&ディック兄弟が経営する<マクドナルド>と出会ったレイが、その革新的なシステムに勝機を見出し、手段を選ばず資本主義経済や競争社会の中でのし上がっていく姿は、まさにアメリカン・ドリームの象徴だ。手段を選ばず資本主義経済や競争社会の中でのし上がっていくレイと、兄弟の対立が決定的になる過程は、どこか後ろめたさを感じながらも、スリルと羨望、反発と共感といった相反する複雑な感情を観る者に沸き起こすに違いない。
熱い情熱で挑戦を続け、世界有数の巨大企業を築き上げた彼は英雄なのか。それとも、欲望を満たす為にすべてを飲み込む冷酷な怪物なのか。野心と胃袋を刺激する物語。
あらすじ
1954年アメリカ。52歳のレイ・クロックは、シェイクミキサーのセールスマンとして中西部を回っていた。ある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を抱き向かうと、そこにはディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店<マクドナルド>があった。合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わす。次々にフランチャイズ化を成功させていくが、利益を追求するレイと、兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、自分だけのハンバーガー帝国を創るために、兄弟との全面対決へと突き進んでいくーー。
映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
感想・その他
他のDVD映画の予告編を観ていて、面白そうだと思い借りてみた映画です。予告編でなんとなく予想はついていましたが、この作品は主人公レイ・クロックの単純な成功物語ではありませんでした。その裏には、我々が知らなかった「ヒミツ」が隠されていたのです。映画の題名に付いている「ファウンダー(Founder)」とは「創業者」という意味ですが、この作品を観ると、本当の創業者は誰だったのか、という問いかけが自然と頭に浮かびます。マクドナルド兄弟の存在や、そのアイデアをビジネスとして拡大させたレイ・クロックのやり方などを見ていると、タイトルに込められた意味が深く理解できます。観る者に、成功の裏側にある倫理や功績の帰属について考えさせる、巧みなタイトルだと感じました。

また、映画の後半で登場するレイの再婚相手には驚きました。ER緊急救命室で「サム」としてお馴染みのサマンサ・タガート、つまりリンダ・カーデリーニではありませんか。私は当時、14年前の若きリンダ・カーデリーニしか知りませんでしたが、映画での姿はすっかり大人の女性として落ち着いた雰囲気になっていて、年月の流れを実感しました。ちなみに、今ちょうどDlifeでERのシーズン10が放送されているので、そのギャップを感じると、キャリアの長さや変化を実感せざるを得ません。
このように、ストーリーだけでなく、登場人物の経歴やキャスティングの面白さも楽しめる映画で、視聴者に多くの発見や驚きを与えてくれる作品でした。
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